ジンマー社のスプラインHAインプラントには、フィクスチャーの表面に特殊なコーティングが施されています。それは文字通りHA（ハイドロキシアパタイト）によるコーティングです。フィクスチャー製造の際、プラズマ炎を用いてHA粉末を吹き付けて表面をコーティングします。その結果、フィクスチャー表面には特殊な結晶構造が形成されるのです。これがスプラインHAインプラントの大きな特徴です。ちなみに、このコーティング技術を専門的には「MP-1」と呼んでいます。ジンマー社が開発した独自の技術です。

冒頭で述べたように、チタンと骨とはオッセオインテグレーションによって結合しますが、フィクスチャーの表面構造によっては結合様式が異なってきます。従来のチタンインプラントでも、当然、骨とのオッセオインテグレーションは起こるのですが、フィクスチャーと骨との間に「ムコ多糖体タンパク」が介在しており、わずかなギャップが存在していることがわかっています。これは電子顕微鏡レベルでのお話です。つまり、従来のチタンインプラントは、ミクロレベルで完全には結合していないといえます。そこで開発されたのがジンマー社のスプラインHAインプラントです。

ジンマー社のスプラインHAインプラントには、特殊なハイドロキシアパタイトコーティングが成されることで、フィクスチャーと骨との間に「カルシウムブリッジ」が形成されます。すると、フィクスチャーと骨との間には、有機質であるムコ多糖体タンパクではなく、無機質であるハイドロキシアパタイトが介在することとなるのです。このカルシウムブリッジには、高い骨伝導能が期待できるため、単に有機質の介在を阻害するだけでなく、骨との強固な結合を実現することが可能となります。これは、生体における骨折の治癒初期段階と同じ現象ですので、非常に合理的な方法でオッセオインテグレーションが獲得できるといえるのです。

ジンマー社のスプラインHAインプラントには、MP1によるHAコーティング以外にも、もうひとつ大きな特徴があります。それはフィクスチャーとアバットメントを連結する機構です。

アバットメントとの強固な連結機構

スプラインHAインプラントの「スプライン」とは、インプラント体とアバットメントの連結部分に付与されている構造を差します。スプラインはジンマー社独自のエクスターナル構造となっており、フィクスチャーアバットメントを強固に連結することを可能します。具体的には、フィクスチャーとインターフェイス部分に突出した6つのタインがあり、アバットメントの内側には6つのスロットが付与されています。これらが機械的に嵌合することで、高い維持力および抵抗力を発揮します。

ちなみに、一般的なインターナルコネクションでは、インプラントの内側でアバットメントとの嵌合が成されているため、ボディの強度を低下させるようなリスクがありましたが、その点、スプラインHAインプラントは安心です。独自のエクスターナルコネクションによって、咬合力等に対する高い抵抗力を発揮します。